もしも、私の背中に翼があったなら。(短編)
「無事で良かった………。なんで戻ったりなんかしたの?危ないよ。」
『彼は仕事に行って、家にはいないと思ったから……』
今の私にあるのは最低限の荷物だけ。
りょう………
私はもう戻らない。
もう……
りょうの元へは行けないよ。
こんな風にりょうと終わってしまうなんて…
ただ悲しい気持ちでいっぱいになった。
「彼は、どんな人だった?」
『え?』
「最初はそんな人じゃなかったんだろ?」
向井さんは私の隣に座って聞いてきた。
『真っ直ぐでバカで……単純で………優しい人だった。大好きだったのに………』
向井さんは
ただ泣くしかできない私を
そっと隣で
見守るように見つめていた。