もしも、私の背中に翼があったなら。(短編)
それから、向井さんとの生活が始まった。
本当に家でも仕事でもずっと一緒なのに、
飽きなくて楽しい日々だった。
顔の傷もだいぶマシになってきて、私はりょうのことを忘れるくらい毎日が充実していた。
向井さんとは家事を分担して生活していて、たまに仕事帰りに食事に行くことや、一緒に買い物に行くこともある。
職場のみんなには内緒だった。
だけど、みんなからはよく
仲良いねって言われていた。
いつしか向井さんは私を“高野さん”ではなく“美沙ちゃん”と呼ぶようになった。
ずっと一緒にいるけれど
付き合ってるわけじゃない。
向井さんは私に、そのままでいいよって言ってくれる。
もちろん一緒に住んでいても、
寝る時は別々だし
向井さんは私に手を出したことはなかった。