もしも、私の背中に翼があったなら。(短編)
墜ちていく
久しぶりに鍵を開けた。
2ヶ月ほど前まで
ここは私が帰るべき場所だった。
愛する人との
大事な場所だった。
「美沙、久しぶり。」
部屋の中は何も変わっていなかった。
だけど、私が出ていってから
りょうはまともに食生活を送れていなかったのか
テーブルの上にはカップ麺の容器などが散らかっていた。
『私の……荷物は…?』
部屋にはまだ
当たり前のように私の荷物がある。
「まとめてないよ。」
『…え?…………じゃあ今から自分でまとめるね。』
私が出ていく準備をしようとすると
りょうは私の腕を掴んで言った。
「美沙、いくなよ。」
私はりょうの顔を見た。
『え……?私は荷物を取りにここへ来ただけだよ。話が違うよ、りょう。』
りょうは私の腕を離さない。