もしも、私の背中に翼があったなら。(短編)
飛んでいきたい
電話を切った後も何度も向井さんはかけなおしてきていた。
出たい
電話に出たい
きっとすごく心配してる
「電源、切れよ。」
りょうに言われて私は鳴り続ける携帯を切った。
「俺が預かっておく。もうこれから誰とも連絡取るんじゃねーぞ。仕事にも行くな。」
『え!?』
「俺が仕事に行ってる間に外に出たら、どうなるか分かってんだろうな?」
どうなるか……
なんて分かる…
りょうの言うことを聞かなかったら
私が1人で逃げようと
向井さんの元へ行こうと
どっちにしろ向井さんを巻き込むに違いない
私はりょうの命令に従うしかなかった
向井さんを巻き込みたくない
それだけしか考えられなくて…
私は
籠の中の鳥になったみたいに
毎日、辛い日々を送った。