もしも、私の背中に翼があったなら。(短編)
玄関のドアを開けるとそこには向井さんの姿。
「やっぱり………いた。」
向井さんは傷だらけの私をそっと抱きしめてくれた。
恋しかったぬくもりに
涙が溢れる。
「怖かっただろう?もう大丈夫。」
向井さんは私の髪を撫でる。
『どうしてここが……分かったの??』
涙で滲んだ視界の中
私は向井さんの姿だけをやきつけた。
「美沙ちゃんから電話であんなこと言われて、すぐに彼が関わっているって分かった。店長に頼んで美沙ちゃんが店に登録してた住所を教えてもらったんだ。」
そっか。
仕事先にはまだ
りょうと住んでいたままの住所が登録されてある。
向井さんは、私がりょうにつかまってしまったことを察して
命がけでここに来てくれたんだね。