もしも、私の背中に翼があったなら。(短編)
「どうして戻ったりなんかしたんだよ?」
向井さんは愛しい目で私を見つめた。
『携帯を変える前に電話があって……俺も引っ越すから最後に荷物取りにおいでって言われたの…。』
信じた私がバカだった…
ごめんなさい。向井さん。
「騙されたのか…。またヒドイことされたみたいだな。許せない。」
私のおでこにある傷に触れる向井さんの手。
「店のみんなも、急に美沙ちゃんがいなくなって心配してる。早くここから逃げよう。」
向井さんは私の手を握って引っ張った。
『待って!!!………だめだよ。もしりょうに見つかったら次は何されるかわからない。』
「何言ってるんだよ。美沙ちゃん、こんなの間違ってる。逃げるんだ。」
『だって……りょうは私が向井さんと付き合ってることも、向井さんの家も知ってる………見つかったら向井さんが何かされる!!!』
私は泣きながら言った。