もしも、私の背中に翼があったなら。(短編)
疑惑の芽生え
新しい携帯を買った。
1番に電話帳に登録したのはもちろん向井さん。
両親を失ってからずっと1人だった私には、向井さんだけが新しい家族なんだ。
移動になった支店での仕事にも慣れた。
人間関係も楽しくて
家に帰れば向井さんと平和な時間を過ごした。
あれから、りょうとは何の関わりもなくなった。
りょうはもしかしたら
私たちを探しまわっているかもしれない。
もし、りょうが諦めてくれなかったら
いつか見つかってしまうんじゃないかって
怖くなることもある。
知らない番号から電話があればドキッとした。
登録していない仕事関係の人からの電話だったんだけど…。
些細なことにまだビクビクしてる私。
そんな私に追い討ちをかけるように新たな不安が芽生えた。