最後の恋って、なに?~Happy wedding?~

 仕事のために様子を気にしてくれていたんだろうけど、そこまで考えてくれていたとは知らなかった。本人も言わなかったし。

「案の定、来てみれば本当に無理していたな。トイレから戻ってきたとき顔色悪かったから」
「それは……」

 本当の事が言えず、桐葉さんから目を離し口篭ってしまう。
 茉莉愛ちゃんの一件を、関係のないこの人に話せるはずがない。これは私の問題だから……

「それにしても。俺も気分の悪い飲みの席だったな……」

 頬杖をついていた手で今度はクシャっと髪をかきあげ、げんなりしながら溜め息を吐く桐葉さんに『何かあったんです?』と尋ねると、彼はようやく私の方にチラッと目線を移して重たい口を開いた。

「俺はどうも《《あの女》》が苦手だ」
「あー……」

 誰とは言わずともすぐにピンときたのは、それくらい彼女の印象が強かったから。そしてまさか桐葉さんの口から”苦手”という言葉が出るなんて。

「余程キツかったんですね」
「俺はあぁいうタイプが1番困る」
「元カノに似ているから?」
「あぁ。思い出しただけでゾッとする」

 やっぱりそういう理由なんだなと納得。トラウマを思い出させるほどに強力だった茉莉愛ちゃんって、やっぱり怖い。

「でも支配人が彼女に言い放ったあの言葉、なかなか良かったですよ」
「は? 俺が何を言った?」
「それはそれは面目丸潰れなお言葉でした」


 
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