最後の恋って、なに?~Happy wedding?~
事の発端は、結婚式を控えている新婦の《《ある》》相談からだった――――
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「担当を代えて貰いたい……?」
打ち合わせ会場の端の席で、正面に座る新婦からの思わぬ言葉に驚いて聞き返してしまう。
今日アポもなく突然来店された彼女は、2カ月前に私がこの式場を案内し契約を頂いたお客様。
今年の冬に式を挙げるとの事で少しずつ打ち合わせを始めてきたはず。確か担当しているのは、茉莉愛ちゃん。
その担当を代えて欲しいなんて、いったい彼女達に何が―――
「うちのスタッフと、何か……あったんでしょうか?」
俯き加減に暗い影を落とす彼女に慎重に理由を訊ねてみたけれど、余程の事があったのか顔を上げて私と目を合わせてくれようとしない。
それどころかますます表情は曇るばかりで、これから幸せいっぱいな結婚式を挙げるようにはとても見えない。
「大丈夫……ですか? えっと……飲み物をお持ちしますね」
どうしようかと心配になり、ひとまずお茶を飲んで落ち着いてもらおうと席を立つ。すると、下を向いていた新婦はゆっくりと顔を上げてようやく私と目を合わせてくれた。
そして彼女は、涙目に声を張って訴えてきた。
「あの担当の人、私の彼を誘惑しているんです!」
と―――――
「え……」
あまりに突拍子もない一言に、私は愕然と言葉を失ってしまった。