最後の恋って、なに?~Happy wedding?~
今このタイミングで最悪。
「急いでいるみたいだな」
「え、えぇ……まぁ……」
勘がいい桐葉さんにバレたらまた何を言われるか。
そう考えたら面倒で、避けるように彼の脇をすり抜けようとした。……のに。
「階段の真ん中で抱き合うのは、新郎新婦だけにしてくれよな」
「なっ!? 見てたんですか!?」
桐葉さんの何気ない一言にビックリしすぎて足を止め、彼の方に顔を向けてしまった。
と、目を合わせた桐葉さんはフンッと嘲笑いながら続ける。
「見たくて見たわけじゃない。大階段で堂々とヤッてれば誰だって嫌でも目に付く」
「ヤッてるとか誤解を招く言い方しないでください」
言い方に悪意がある。この人絶対に私の事を馬鹿にしてると思う。
「元カレと抱き合ってドキッとしたんだろ」
「な、なに言ってるんですかっ」
「図星だな。顔も真っ赤にして照れてるのがバレバレ」
「だからそんなんじゃないんです! あれはただの事故だし……」
語尾がだんだんと小さくボソボソ呟くようになってしまう。
よく考えてみれば、どうして桐葉さんに必死に否定しているんだろ。別にこの人に勘違いされても困らないのに。
「抱き合っていたから、ヨリでも戻したのかと思ったが」
「そういうの聞くの、このご時世セクハラになりますよ」
「事実を言ってるだけだ」
悪びれる様子もなく言い返してくる彼に、こっちが負けてしまいそう。