最後の恋って、なに?~Happy wedding?~

 近くの総合病院に送ってもらったあとは急患として通され、怪我の処置やら検査やらにまわされた。

「今のところ異常はなさそうですが、これから気分が悪くなるような事があったらすぐに来てください」
「はい。ありがとうございました」

 診察室で医師から帰宅の承諾が出たところで、待合室にいる桐葉さんと合流。包帯に絆創膏にと痛々しい私を見るなり、彼はまた怖い顔をしている。

「入院はしなくて平気なのか?」
「それは大げさですよ。ただのかすり傷だけですし。まぁ箇所はたくさんありますけど」

 笑って答えてみるも桐葉さんは黙ってムッとしている。なぜずっと怒っているのか、わからないだけに対処に困るんだけど……

 それに桐葉さんは一向に立ち上がろうとせず、椅子に腰掛けたまま動かない。雨で濡れたきり拭いてもいないせいか足元は水が滴り落ちている。

「診察終わったので戻りませんか? このままだと支配人が風邪ひいちゃいますし……」

 言ってみるものの、彼からの返事はなく無言のまま腕を組んで何やら考え事をしているように見える。
 仕方なく私も隣に腰掛け、彼の気が済むまで一緒に待つ事に。

待合室から他の患者が次々といなくなっていく中、桐葉さんがようやく重たい口を開いた。

「階段から落ちたのって……あの女のせいか?」
「え……」
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