最後の恋って、なに?~Happy wedding?~
かいつまんで簡単に説明しても、桐葉さんは信じてないようで表情を強張らせたまま目を細める。
「思い出したって、落ちた事をか?」
「はい……」
「トラウマになったんだな」
「でもきっと今だけだと思うので……」
「わからないだろ。PTSDだったらカウンセリングだって必要になるかもしれない。もっと自分の心配をしろ」
眉をキッと《《への字》》にし細目を更にキツく鋭くするから、これ以上どう言ったらいいのか凄く言葉に悩む。
それにカウンセリングだなんて大袈裟……とも思ったけれど、まぁさっきは確かに恐怖で足が竦んでしまったし少なからず後遺症としては残っているのだから仕方ない。
「そもそも昨日の今日で仕事をするのがいけなかったんだ。だから休めと言ったんだぞ」
「はい……すみません」
「今日はもう帰れ。これは上司の命令だ」
「あ、はい……」
”上司の命令だ”なんて言われてしまえば何も言い返せず大人しく言う事を聞かざる得なくなる。仮にも桐葉さんは責任ある立場の方だから。
幸いにも結婚式は無事に済んで私の仕事も終わったからすぐに帰る事は出来る……けれど、こんな事が続くと仕事に支障が出て困るのも確か。
桐葉さんの指示で事務所に戻った私は、渋々荷物をまとめて帰る準備をしていた。
すると、片づけを終えて戻ってきた凪と鉢合わせる事に――――