最後の恋って、なに?~Happy wedding?~
「あ、凪……」
「お疲れ……」
誰もいない事務所で2人だけの空間は、妙な緊張感に包まれて昨日の事が思い出される。
あの時、雨で視界は悪かったけれど2人は確かにお互いの顔を見合わせて何か言いたそうにしていた。
それがどんな事かはわからないけれど、私は凪と桐葉さんの表情が忘れられない。
「瑠歌、怪我は大丈夫?」
「うん、たいした事ないから平気」
「それなら良かった……」
自席に移動しながら安堵の言葉を吐露するも、表情は優れない。それどころかまるで心を閉したかのような沈んだ顔をしている。
凪は今なにを思ってそんな顔をしているの?
昨日、誰に何を言おうとしていたの……?
「瑠歌」
疑問に思った私が尋ねるより前に、凪が口を開く。
「俺の勘違いだといけないから聞くけど、昨日の階段からの転落は事故? それとも……茉莉愛が関係してる?」
怖い顔をしながらストレートに聞かれた質問に、心臓が一瞬跳ねる。
あれは茉莉愛ちゃんと話をしていての事故。いろんなタイミングが重なって起きてしまった事だから仕方ないけれど、凪の表情からはそう思っていないように感じる。
「彼女は関係ないよ。雨で足場が濡れていたのに、油断して足を踏み外した私の不注意だから」
『そこに居合わせたのが茉莉愛ちゃんだったってだけ』と否定しても、納得していないのは目つきでわかる。