最後の恋って、なに?~Happy wedding?~
まぁ実際、少し嘘も入っているけれど本当の事なんて言えば凪は……
凪は、どう思うのかな? 私を疑う? それとも……心配してくれる?
ふと頭の片隅でそんな事を考えていると、また凪に『瑠歌』と呼ばれ一瞬にして雑念が吹き飛んだ。
「昨日、何が起きたのか最初わからなかった。けど悲鳴が聞こえてきたから外に出てみたら何人もの人が集まっていて……そこで瑠歌が階段から落ちたって言うのを知って、正直凄く……動揺したんだ」
「え……」
「すぐにでも駆け寄りたいと思ったのに……足が動かなくて……」
グッと強く拳を握りながら奥歯を噛みしめて悔しさを滲ませる凪に、なぜだかわからないけど……少しだけ嬉しいと思う気持ちを持ってしまった。
別れた相手にそんな事を思うなんて、どうかしてるのに……
「それにもう1つ。……意外だと思ったんだ」
拳を緩め、怖い顔つきが少し柔らかくなって凪は続ける。
「支配人が、あんなに早く誰よりも先に瑠歌に駆け寄ったから……」
ここで初めて、凪の口から支配人のワードが飛び出した。
「雨で濡れるのなんて構わず凄く必死だったし……あんな顔、初めて見た」
「それは部下が怪我したからで──」
「怪我したのが《《瑠歌だから》》だと思う」
私の否定の言葉を遮るように迷いもなく自信に満ちた顔で即答され、反論の余地を与えてもらえない。