最後の恋って、なに?~Happy wedding?~

 彼女の口から初めて明かされた本音は、あまりに身勝手な言い分だった。けれど今までのタチの悪い言動とは違い、そこには素直な想いが込められているように感じてしまったのは、甘い考えなのかもしれない。

「じゃぁ茉莉愛ちゃんは……最初から凪を好きだったわけじゃないんだね?」
「そんな事はっ」

 ハッと顔を上げて、ようやく私と目を合わせてくれた茉莉愛ちゃん。

 けれど続きを言いたそうにするも、躊躇して結局また俯いてしまう。
 それが意味する事を……私は聞き出そうとは思わなかった。

 たぶんもしかしたらだけど、最初は本当に凪の事が好きだったのかもしれない。
 それが例え、私に対する当てつけだったとしても。真実は本人にしかわからないけど───

 それでももう、私は憎んではいない。
 だってこのコは……───

「棗さんが階段から落ちた時……私のせいでこんな目にって思ったら、怖くて仕方がなかった。下手したら死んじゃっていたかもって考えたら……私……っ」

 真っ青な顔で全身をガタガタ震わす彼女は、全てが悪い人って訳じゃないと思うから。

 気持ちを聞いて納得しようもなかったけれど、知る事が出来たってだけでも私自身も前に進めるような気がした。

 
 上司として仕事を辞める決断は変わりないかと訊ねるも、彼女の決心は揺らぐ事はなく、最後まで『すみませんでした』と何度も謝罪の言葉を口にしていた───

 
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