最後の恋って、なに?~Happy wedding?~
恋人がいる事を隠しているからそう言って嘘をついているのか、実際に本当に恋人じゃないのかわからないけど、彼を訪ねて来ている事に変わりはないから会ってもらわないと対処のしようがない。このまま私にはどうする事も出来ないし。
「名乗りたくはないんですって。それに『彼女が会いに来たって言えばわかるから』って、そう言ってましたよ。支配人を下の名前で呼んでいましたし、親しい方じゃないんですか?」
「おい待て、お前今なんて言った?」
急に桐葉さんは緊張した声で顔つきが険しく変わったのがわかった。
「何って……だから――」
「下の名前でって、まさか……」
自己完結したようで、桐葉さんは仕事を中断し慌てた様子で急ぎ気味にこの場を後にした。
どうやら来客の相手に身に覚えはあったらしい。
伝言も伝えたし私も仕事に戻ろうと会場を後にすると、打ち合わせルームの方から怒号が聞こえてきた。何事かと近づくにつれ声の主は更にヒートアップしていき、見学に来ていたお客様は驚いた様子で声の方に視線を向け、担当しているスタッフ達はアタフタしながら困惑の色が隠せずにいる。
新郎新婦同士の揉め事なのか、だとしてもこのままだとマズイ。
私は様子を見にルームへと向かい、怒号の正体を見て唖然とした。
「どうして支配人がブチ切れてんの……」
まさかのここのトップなのだから――