最後の恋って、なに?~Happy wedding?~

「ふざけんな! どうしてここがわかった!? なぜ来たんだよ!」

 鬼の形相で怒鳴る桐葉さんからは、どこか焦りが感じられる。こんな姿を早々見せる事がないだけに、いったい何事? って思う。

「わかるに決まってるじゃん。同業者なんだから情報は耳に入るのよ?」
「誰かに聞いたのか!? それともまさか調べたのか!?」

 桐葉さんの怒りのボルテージはMAXになっていて、怒鳴る声に更に力が入る。だけど少し怯えているのが彼の表情の緊張感から伝わってくる。
 ”同業者”って事は、この人は私達と同じプランナーって事?

「何しに来たか知らねぇけど、俺の前に現れるなって言ったはずだ! こっちはお前の顔なんて見たくねぇんだ! 今すぐ帰れ! そして二度と来るな、俺に関わんな!」

 怒涛の攻めでも相手の女性は全く怯む様子がない。なんなら怯えているのは傍観しているスタッフやお客様で、私的にはこっちの方がマズイ。
 このままだとここの印象が悪くなってしまうし、”トップの怒りで”なんて理由は尚更困る。だからそれを止めに入る役目は立場上、私だけど……。
 まさか公の場で上司を注意する日が来るとは……

「支配人、他のお客様もいます。声を押さえて、そして落ち着いてください。口が悪すぎて迷惑になります」

 ちゃんと一言添えて。
 
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