最後の恋って、なに?~Happy wedding?~

 すると桐葉さんは目が覚めたらしく、ハッとまわりを見回し誤魔化すように軽い咳払いをすると、急に慌て始めた。

「と、とにかく! これ以上話す事はないから帰ってくれっ」

 罰が悪くなったのがすぐわかる。いつも冷静沈着、仕事のアクシデントの時でさえ落ち着いている彼が、まさかプライベートでこんなに感情を露わにするとは。たぶん本人が1番動揺しているはず。
 その証拠にまわりの人達に深々と頭を下げ、そそくさと足早にこの場を後にしていった。

 この人どうするの……

「んもぅ~こっちはまだ李月に話す事があるのに!」

 プクっと頬を膨らませ可愛く困った顔をしてくれるけれど、そんな顔をされてもこっちはもっと困る。後始末なんて勘弁して欲しいところだ。

「あなた確か、棗さんって言いましたっけ?」
「へ?」

 突如、今度は私にヘイトを向けられた。名前もしっかり覚えられているし、ちょっと嫌な予感がする。そしてそういう勘って、案外当たるもの。

「さっきの李月に対してあんな言い方、アレなんです? 何様?」
「・・・はい?」
「あなたがどういう立場か知りませんが、李月にもっと敬意を払うべきじゃないです? 彼の方が上なんですから」

 一方的な攻撃に、驚きのあまり開いた口が塞がらない。


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