最後の恋って、なに?~Happy wedding?~

 そして私達が1番気になったのが――

「あの女って支配人の何? 彼女?」
「さぁ……? 自分では”彼女だ”って言い張っていたけど支配人は凄い拒絶してたっぽいし……」
「もしかしたら元カノとかなんじゃないの?」
「元カノ……」

 仁菜に言われてふと思い出した。以前、桐葉さんと2人で飲んた時に話してくれた元カノの存在を。もしその相手がさっきの女性だとしたら、確かに桐葉さんが拒絶するのも無理もないしあの発言が出たのもわかる気がする。トラウマを植え付けられて二度と会いたくないと思っていたのに、まさかまた再会するなんて恐怖でしかないはずだから。

「ヒステリック気味にもなる訳か……」

 桐葉さんから元カノの話は聞いていたけれど、実際に会い直接喋ってあんな事を言われたおかげで、私的にも印象は良くなかった。

 今回急に訪ねて来たのだって、桐葉さんへのストーカー行為とも考えられる。今日は素直に帰ってくれたけど、次また来そうな嫌な予感しかしない。

 桐葉さんが少し心配になった私は、仁菜と別れてから様子を見に事務所に行くと、自席で溜め息を吐く彼の姿があった。

「支配人? 大丈夫です?」
「あ、あぁ……棗。さっきは悪かったな」

 なるべく自然体に、一生懸命平然を装っているんだろうけど全然余裕なんかなさそうに見える。まだ相当動揺しているんだと思う。
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