最後の恋って、なに?~Happy wedding?~
『えぇ、その《《まさか》》です』から始まり、私は先程のやり取りをざっくり伝えると、彼は両手で頭を抱え机に項垂れた。
「よりによってお前まで巻き込んで迷惑を掛けるとは……」
「別にそこまで迷惑は掛かっていませんけどね。軽く流しますし」
「あぁ、そうしてくれ。相手にするだけ疲れるからな」
元カノの取り扱い注意の忠告を受けたあと、本人が教えてくれなかった名前を聞いた。
彼女の名前は”杉森 真夜”
見た目が若く見えたけど、年齢は私と同じ。若く見えるところだけは羨ましい。そこ《《だけ》》は。
名前を聞いてもピンと来ないけれど、でも確かにどこかで見た事がある。直接会った訳じゃないと思う。もしかして何かで見た事があるのかな。
曖昧すぎる記憶に、私の勘違いかもしれないし気のせいなのかも。と深くは考えていなかった。そのくらいたいした事じゃないと思ったから。
元カノ”杉森さん”が桐葉さんを訪ねてきてから1週間が経ったが、その1回だけでそれから顔を見せる事がなかった。
「あれから来ませんね、元カノさん」
「やめてくれ。来られたらこっちが困る」
「とか言ってると来たりして」
「フラグ立てるな。俺もこの《《嵐の前の静けさ》》みたいなのが逆に怖くて仕方ないんだから」
何もない方が怖い。そう思ったのは私も同じだった―――