最後の恋って、なに?~Happy wedding?~

「あの……支配人、瑠歌さん……」

 私と桐葉さんが事務所で話しているところに、女性スタッフの1人が恐る恐る声を掛けてきた。それも凄く怯えた表情で。

「どうしたんだ?」
「それが……お2人にお客様なんですが……」
「私達2人に……?」

 躊躇い気味に頷くスタッフに、私と桐葉さんは顔を見合わせて首を傾げる。私達2人に来客なんて珍しい。それこそ社長の訪問でくらいしかないのに。

 困惑した様子の女性スタッフの態度も気掛かりだったけれど、ひとまず私達はその《《来客》》の対応をするため正面入り口へと移動。
 対面するなり一瞬にして私と桐葉さんが絶句したのは言うまでもない。同時に、女性スタッフの違和感も納得がいった。

「真夜っ! お前どうしてまたっ」

 つい声を張り上げてしまう桐葉さん。これはもう拒絶反応でしかなく仕方ない反応かもしれない。だって相手は先程まで噂をしていた元カノ・杉森さんだったんだから。

「だから李月に話があるんだってば。もちろん仕事の話よ?」

 ”仕事の話”
 そう言われてみれば、前回も今日も杉森さんの服装は上下紺色のスーツ。プライベートの用事なら私服で来るはず。
 じゃぁどうして……

「仕事? お前と俺に何の関係があるんだ?」

 私も桐葉さんと同じ事を思っていた。彼女とは同業者であっても働いている場所が違うのに、いったいって―――
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