最後の恋って、なに?~Happy wedding?~
すると杉森さんは上着の内ポケットから名刺入れを取り出し、中の1枚を私達に手渡した。
中心に書かれている杉森さんの名前の左上には、”ドレスコーディネーター”と”チーフ”の文字が記されている。
どうやら彼女はドレス専門の仕事に就いているみたい。この業界では、なくてはならない仕事だ。
「転職してたのか」
「そうだよ。プランナーの仕事も楽しかったけど私はやっぱりドレスが好きだから、もっと携われる方に進んだんだ」
堂々と胸を張って言う杉森さんは生き生きとしていて、その瞳は一切の曇りもなく輝いて見えているから『目標があって凄いな』ってこっちが感化される。最初の印象はあまり良くなかったけれど、自分が本当にやりたかった事を仕事にして実現させたのはカッコいいし私も見習わないとって思わされた。
さすがだな。桐葉さんが1度は好きになった人だから、なんとなく納得。
「それで今度、ここ”オルコス・ド・エフティヒア”と契約する事になったからその報告と今後について――」
「は!? 契約!? いったいどういう事だ!!」
杉森さんが最後まで言うのを遮って、桐葉さんの驚いた声が響き渡る。
「もしかしてまだ聞いてなかった?」
「俺は聞いてないぞ! 棗っ、お前は知っていたのか!?」
「いえ私も何も……」
勢いそのままに、いきなりこっちに話を振られたから圧倒されて体が仰け反った。