最後の恋って、なに?~Happy wedding?~

 杉森さんが挨拶に来てから数日が経ったが、その間ずっと桐葉さんの表情は曇ったまま。
 仕事中の彼はいつも通りで何事もなかったようにスタッフやお客様に応対しているけど、時より溜め息が聞こえてくるのは気が滅入ってる証拠なんだなと心配もしていた。

 またゆっくり飲みに行って愚痴でも聞こうかな。『結構だ』とか言われそうだけど。

 それから2日後、早速協働する日が来てしまった───


 ***


「えっと……そういう訳で今日から一緒に働く、杉森真夜さんです」

 朝礼の挨拶でスタッフ全員を前に簡単に紹介してみたけれど、みんな複雑な表情を浮かべながら頭を下げている。
 
 数日前に知った話、スタッフのみんなはファッション雑誌を見ていたために以前から彼女の事は知っていたらしい。だから本当は、『本物に会えて嬉しい』って喜ぶはずなのに、先日の桐葉さんとのやり取りを目の当たりにしてガッカリしたみたい。
 杉森さんに対する『カッコイイ』ってイメージが、みんなの中で勝手に出来上がっていたから余計にだと思うけど。
 けれどもう今は要注意人物でしかない。

「ではドレスのフィッティングルームにご案内しますね」

 難なく朝礼も終わり、私は杉森さんを仕事場に連れて行こうと声を掛けるものの……

「結構です。李月にお願いするので」

 呆気なくバッサリ拒否されてしまう始末。
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