最後の恋って、なに?~Happy wedding?~
「はあ……」
唖然としてしまい溜め息に似た返事が出てしまう。
私じゃダメと? そんなに桐葉さんがいいんですか。子供のワガママみたいで怒りを通り越して呆れる。
「杉森、これは仕事なんだぞ。子供じゃないんだからお前のワガママで困らせるな」
桐葉さんも注意はしてくれるけれど、そう素直に聞いてくれるはずもなく……
「苗字なんて他人行儀で寂しいな。昔みたいに『真夜』って呼んでよ」
そ、そっちか。
桐葉さんも含め、こっちが言う事は何1つこの人には刺さらない。それどころか注意を無視して上目遣いに可愛い事を言っちゃうあたり、清々しいほど前向き。
「昔は昔だ。今さら引っ張り出すな。お前とはもう仕事以外で関わる気はない」
桐葉さんはブツブツ文句を言いながら、『ほら行くぞ』と杉森さんをフィッティングルームへと連れて行く。
なんだかんだ言っても拒絶しきれないんだろうな。桐葉さん、案外優しいところがあるし。
それにしても……こっちはこっちでこれから一緒に仕事をしていくのが気が重い。どう付き合っていくべきか考えないと、毎回こんな振舞いされてたら仕事にならない。
それから1週間が経ったが、初日からバリバリ働く杉森さんの知名度のおかげで雑誌を見たという新規のお客様が多く来店するようになり、更にしっかりとここの宣伝までして貢献してくれている。