最後の恋って、なに?~Happy wedding?~
私個人的には好きじゃない相手だけれど、ビジネスにおいてはこういう人は必要不可欠だと思う。
悔しいけれど、この人が来てから予約の数も増えているのは事実。同じドレスであっても、ヘアメイクやアクセサリー1つで魅せ方がガラリと変わる。みんな彼女のカリスマ性を好んで求めるんだろう。
私にはまだまだ足りない部分だって、思い知らされる。正直、ちょっと複雑だけど……
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「「はぁ~……」」
静かな事務所にて私と桐葉さんの溜め息が重なる。
「支配人が溜め息なんて仕事でも見た事ないのに、相当病んでるんですね。原因はやっぱあの人ですか」
「あぁ。おかげで胃も痛むしな。そういうお前も苦労してるのか」
「支配人ほどではないですけどね」
2人揃って窓の外の遠くをボーッと眺めながら、また溜め息を吐いた。
大概の事は百歩譲って目を瞑ろうと思っていたけれど、数日前に彼女から突然無謀な頼み事をされ、私はその対処と説得に頭を抱えている。
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「もっと広いフィッティングルームにして欲しい!?」
『お願いがある』と呼び出しを受けてドレスルームへと向かうと、ソファやらテーブルやらの配置を全部ガラリと模様替えしている杉森さんがとんでもない事を言い出した。
「そ。こんなに狭いと試着も仕事もやりづらいの」
……馬鹿にしてます?