最後の恋って、なに?~Happy wedding?~

 そういう訳で見積もりを出してみようとパソコンを開いてみるが……

「そんなの無理だって絶対……いくら掛かると思ってるの、まったく」

 画面に映し出された数字を前に、独り言を漏らしながら私は頭を抱える。
 この式場を管理・運営していく中で、現状では金銭的に余裕がない。そんな時なのにリフォーム案件とか、正直迷惑以外の何物でもない。どう説明し理解してもらおうかと頭を悩ませていると、自席で仕事をしていた桐葉さんが『例のアレか』と言いながら私の横へと移動し背後からパソコンを覗き込んできた。

「あの女、またとんでもない事を言い出したな。こんなの却下だ却下」
「もちろんそうしたいですよ。ですけど彼女にそれが通用するとは思えません。実際、これ意外にもワガママが多くてかなり手こずってますし……」
 
 1週間で既に杉森さんの性格がだいたいわかってきたが、彼女は頑固なところがあって1度提案した事はやり遂げたい傾向がある。もちろん悪い事ではないけれど、こういう時は本当に説得が難しい。

「このまま野放しにして自由にやりたい放題させる訳にはいかない。俺が上司としてガツンと言ってやる」
「ガツンと……ねぇ」

 説得する気満々に意気込んでいるけれど、たぶん桐葉さんでも彼女を納得させるのは至難の業じゃないかなぁ。
 そう簡単に言う事を聞くとは思えない。
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