最後の恋って、なに?~Happy wedding?~

 と、私達が顔を見合わせながら話をしていると───

「まさか2人、付き合っているの?」

 事務所の入り口から発せられた言葉は明らかに私達に向けられていて、思わず桐葉さんと同時に声の方へと顔を向け……息を呑んだ。
 
「杉森……さん」

 よりによって1番誤解されたくない面倒な人に見つかてしまうなんて。

 開き戸を全開にしたまま腕を組んで仁王立ちしている杉森さんは、物凄く不機嫌そうに顔をしかめて言う。

「李月に私以外で彼女が出来るなんて……」

 沸々と怒りが込み上げて今にも怒鳴り出しそうに声を震わせる彼女に殺気を感じた私は、咄嗟に『違います!』とハッキリ否定するも同じタイミングで桐葉さんまで『違う!』とハモってくれた。
 なぜこんな時に合ってしまうのだろうか……

「息までピッタリじゃない。やっぱ2人って、そういう関係なのね」

 怒りが最高潮なのか、今度は落ち着きを払っていてそれが返って怖い。
 杉森さんの中で付き合っている事がほぼ確定しているのか、そう考えると静かにジワジワと迫り来る恐怖に足がすくむ。

 ここで私が何を言っても信じてもらえないような気がするし、なんなら火に油を注いで余計に拗れる恐れだってある。
 ここは黙って桐葉さんが否定してくれるのを待つ事にしよう。
 
 ……と、他力本願にはバチが当たるもので。

「俺が誰と付き合おうが、お前に関係ないだろ」

 はっ!?
 
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