最後の恋って、なに?~Happy wedding?~
想定外の返しに、私は『そういう事じゃないでしょ!』と心で叫びながら桐葉さんの方へと顔を向けて目で訴えるも、本人は全く気付いていない様子で『なんだ?』とでも言いたげな表情でこちらを見ている。
どうして肯定するような言い方しちゃうかなぁ。どうして鈍いの、この男は!!
「やっぱりそうだったんだ……。確かにおかしいと思った。李月が女の人と普通に喋ってるし、笑顔とか見せるなんて今までなかったのに」
またプクッと頬を膨らませて可愛さアピールをする杉森さんに、桐葉さんは若干引いている。
普通に喋る事がそんなに意外なんだろうか。
いくら何でも桐葉さんでもさすがにそこまでは……いや、ありえるか。ここに来た最初なんてほとんど口を開かなかった人だし。
笑顔で会話してるところなんて見た事ないけれど。
「あのなぁ。お前は俺をなんだと思って───」
「李月はもう、元カノの事は吹っ切れたの?」
桐葉さんの発言を無視し、邪魔するように傷をえぐる。
「忘れられるはずないよね、《《彼女》》の事を」
そう言うと徐にスーツのジャケットから《《とあるもの》》を取り出すと、私達に掲げるように見せつけてきた。
「っ!?」
「え……」
目を丸く見開いたまま言葉を失い、その場で固まる桐葉さん。
そして私もまた、《《それ》》を目にして……思い出した。