最後の恋って、なに?~Happy wedding?~

「あ、李月! 来週の式で使う衣装はこれで、アクセサリーはこの色味とデザインで考えているんだけど李月の意見も聞かせて?」
「……そうだな。悪くないはないが、もう少し落ち着いたものの方がドレスが映えるんじゃないか? 例えばこっちとか」
「あー確かに。それは私も迷ってたのよね。さすが李月ね、ありがとう」
「……あぁ」

 ……なに? この会話は。

 通路の真ん中で杉森さんが桐葉さんを呼び止め彼の元へと駆け寄ると、雑誌を広げながら肩を寄せまるで自分達の結婚式の打ち合わせでもするかのような会話をし、最後にお互い見つめあい彼女は微かに はにかんでいる。

 もしかして……ヨリ、戻ってます?
 
 この日だけじゃない。私と桐葉さんが顔を合わせる事がほぼ減って会話がなくなったのとは逆に、彼と杉森さんが一緒にいる頻度は増えたように感じる。それも、誰もいないところで親密に話している姿を何度も見かける。
 どんな内容かは聞こえないからわからないけど、仕事の話じゃないのは確か。だって桐葉さんの様子が明らかに変だから。辺りを警戒しながら人目を盗むように2人きりでコソコソ話しているんだから、よほど聞かれたくない話なんだろう。
 そんな2人を目撃するたび、なぜか複雑な感情になる。なんて言うのか……目を逸らしたくなる。今までそんな事1度もなかったのに。
 ……そう。今まで桐葉さんが誰かと2人きりで消えていく事なんて、1度もなかった。
 
 2人きりで、どんな話をしているんだろう───



 
< 242 / 272 >

この作品をシェア

pagetop