最後の恋って、なに?~Happy wedding?~
この場から出ていくタイミングを失った私は、馬鹿正直に杉森さんの指示通り大人しく会話が終わるのを待っている。
本当は気まずくて居づらいから出直してきたいんだけど……
それに待っている間、余計な事を考えてしまう。
桐葉さん杉森さんの事、今でも下の名前で呼ぶんだ……女の人を呼び捨てにするの、初めて聞いた。
「そういう訳だから、来週の式はこの予定で頼んだ」
「うん、了解。任せて」
どうやら打ち合わせは終わったらしく、最後に桐葉さんが確認事項を伝えて2人の距離が少し開く。
ここでもお互い見つめ合う時間が長いような……と思った次の瞬間、桐葉さんは私の存在を思い出したようにハッとこちらに顔を向け。
「……棗も、このあとここで打ち合わせなのか?」
「え、あ、はい……」
なぜか硬い表情でそんな質問をしてきた。
普段聞いてこないのに。意味深すぎる。
「……そうか」
何か言いたそうな《《間》》が気になったけど、それ以上彼は何も言わず部屋を後にしていってしまった。
なんだったの……今のは。
「気になる?」
「え……」
桐葉さんの後ろ姿を追いかけるように目で追っていると、逆側から杉森さんが核心に触れてきた。
「そんなに見つめて、李月が気になります?」
「見つめている訳じゃ……」
「あら、違う? さっきも私達が話してるところをずっと見ていたわよね?」
クスりと口角を上げ悪戯に笑う杉森さんの反応は、どこか楽しんでいるように見える。