最後の恋って、なに?~Happy wedding?~

「……お疲れ、瑠歌」
「うん……」

 別れた前回の時とは違い、今日の空は厚い雲に覆われたまま雨は降りそうで降らない。結局1日、天気は回復しなかった。

「歩こうか」
「うん……」

 この場に長居してあらぬ噂になってもいけないからと、凪の言葉で私は彼と間を空けながらいつもの帰る道順へと歩き始めた。
 しかし沈黙が続く。チラリと彼の方へと目線を向けると、本人も何か考え事をしているのか、難しい表情で余計に空気が重く気まずさが増すばかり。
 このままだと息が詰まりそう。何か切り出そうにも、話があると言ったのは凪の方だしな―――と無駄に巡らせていたけれど、ついに凪は口を開いた。

「茉莉愛は早退したよ」

 開口1番でさっそく彼女の事か、と半ばうんざりしながら『そうなんだ』と一言だけの返事をすると、また少し間が空く。
 早退しただなんて、そこまでだった? そもそも上司の私が知らないって凪の一存で帰らせたの? さまざま思う事があって、今度はモヤモヤした気持ちが増してくる。

「俺の事なんだろ? 茉莉愛と揉めたのって」

 ようやく凪が本題を切り出して『やっと来たか』と、内心案外冷静な私。揉めたって人聞き悪いからやめて欲しい。

「そんなんじゃない。別に喧嘩とかでもなければ私が一方的に責めた訳でもないし。ただ……」

 どこまで言おうか、言っても良いものなのかと考えて躊躇してしまう。
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