最後の恋って、なに?~Happy wedding?~
乾杯をしたは良いとして、この人と何を話せと? まぁ、付き合えと言ったのは彼の方だから何かしら言いたい事があるんだろうけど……
まさかまた説教? それは嫌だな、最悪。こんな時に嫌味なんて聴きたくない。そうなったら今度こそ本当にすぐ帰ろう。即行で逃げよう。
やや臨戦態勢で、出されたお酒をチビチビ飲みながら隣の様子をチラチラと見る……が、桐葉さんも無言だ。
付き合えって『黙って酒に付き合え』って意味だったの? そのためだけに引き止めたのであれば、謎すぎる。説教も嫌だけど無言もある意味で苦痛を伴う……。
店内のスピーカーから優雅に流れるピアノクラシックや、各テーブル席から微かに聞こえてくる男女の声を肴に、私はこの沈黙が漂う桐葉さんとの時間を耐えているように思う。
そんな中、桐葉さんの持つロックグラスの中で氷がカランと音を響かせたのが合図のように彼がついに口を開いた。
「今日の事だが」
グラスを眺めたまま、まるで《《それ》》に話し掛けるみたいに呟く桐葉さんに、私はすかさず口を挟んだ。
「だからそれは申し訳ないって―――」
「俺こそ悪かったよ」
「!?」
驚きのあまり声にならない声を発し、『この人でも謝るんだ』って心底思いながら目を見開いて隣に座る彼を注視した。
「なんだ、文句でも言いたそうだな」
そしてバレていた。