最後の恋って、なに?~Happy wedding?~

 そんなにわかりやすい顔してた私?

 否定も言い訳も思い浮かばず目が宙を泳ぎ、とりあえず手元のお酒を口にすると、桐葉さんは『少しは否定しろよな」と溜め息を漏らしながら話を続ける。

「何があったか事情は知らない。聞くつもりもない。が、お前が自分から騒ぎを起こしたとも思っていない。だから今日の事は、俺も一方的に言い過ぎたと反省している。……つもりだ」
「……つもり、ですか」
「男女の《《いざこざ》》は面倒になる事は確かだ。俺はそこに興味がない」

 『謝ってやったぞ』とでも言いたそうに自慢げな表情で、グラスに残っている最後の一口をゴクリと飲み干した。
 別に私はこの人に『興味があるか』なんて聞いていないけれど。
 まぁでも謝ってくれるとも思っていなかったし、なんとなく緊張しているようにも見えるから、もしかしたらこの人なりにフォローをしているのかもしれない。と素直に受け取っておくことにして、お礼の言葉だけ伝えておいた。

「女嫌いの支配人でも、私を慰めてくれるんですね」
「お前なぁ」

 ちょっと悪戯に初めてこの人相手に冗談を言ってみると、彼は注文していた次のお酒と空になったグラスを交換してもらいながら困ったように肩をすくめ、呆れた表情をする。そんな顔も初めて見るなと思いながらクスっと笑うと、誤魔化すためか軽い咳払いをしながら言う。

「お前の気持ちはわからないわけでもないんだ」


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