最後の恋って、なに?~Happy wedding?~

 桐葉さんの話を聞きながら、頭の中で元カノの存在を想像してみる。
 印象的に、彼は美人が好みだったのかもしれない。……意外でもないけれど、ふーんと密かに相槌を打った。

「教育係として仕事を教えていたんだが、彼女は賢く手際が良かったし仕事を覚えるのも早かったから、あまり手が掛からなくてな」

 聴きながら私は、自分の最初の頃を思い出していた。確か結構な先輩泣かせ気が……。
 だから彼の話に『出来る女とか羨ましいんですが』なんて感想を抱きながらお酒をまた口にする。

「毎日近くにいて1日の時間を一緒に過ごす事が多かったからか、仕事以外の話もよくするようになって……そこからお互いを意識し始めて……」

 桐葉さんはなぜか急に照れくさそうに最後の方を口籠るから、どうしたんだろ? と彼の方を向いて首を傾げたけれど、『あ、なるほど』とすぐにピンときた。
 自分が職場の女相手にこんな恋愛話をするキャラじゃないとでも思ったんだろう。だから恥ずかしくなったのかもしれないと。
 それを察して、私が代わりに話を進める事に。

「で、結果的にそこからお付き合いが始まったわけですね。良い惚気話じゃないですか」
「は? そんなんじゃない」

 わざと煽ってみると、桐葉さんも私の方に顔を向けて眉を顰めた。
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