最後の恋って、なに?~Happy wedding?~
しかし強ち間違ってはいないようで、彼は気まずさからかまた正面を向いてコホンと軽く咳払いをし『話を戻す』と一言呟いて軌道修正を図る。
「確かに交際は始まった。が、そこからが問題だった」
「問題……?」
「……彼女は非常に……恋愛にのめり込むタイプだったんだ」
また言いづらそうに、言葉を選びながらたどたどしく説明してくれる。まぁ”恋愛にのめり込む”だなんて聞けば話の続きはだいたい想像はつくけれど、一応確認してみた。『《《彼氏》》優先の生活だったわけですね?』と。直接的にではなく飽くまでやんわりと、けれど確信的に私も言葉を選んで。
すると彼は眉間に皺をよせ不愉快そうな顔をし、『それどころの騒ぎじゃない!』と捲し立て始めた。
「彼女は異常なまでに嫉妬深く、他の女性達と仕事の話をするにも常にどこからか見ていて、その視線が毎日怖かった。少しでも笑顔なんて見せようものなら、『私の事なんか好きじゃないのね!』と泣いて喚いて暴れ出す始末だ。職場は女ばかりなんだから仕方ないって説明したって到底聞き入れてはくれなかった!」
「お、落ち着いて支配人っ」
切羽詰まった様子で、興奮しているせいか早口に声のボリュームが大きくなっていく桐葉さんを、こっちまで焦り気味に止めに入ってしまう。