最後の恋って、なに？～Happy wedding？～

　こんな桐葉さん初めて見た。いつも冷静さを失わず、仕事中のアクシデントでさえ絶対に余裕の無さを感じさせない。何があっても慌てた様子を表に出した事なんてなかったのに……
　それだけに、当時の出来事が余程強烈だったのが伝わってくる。

「それだけじゃない。挙句、どこで見られたか知らんが俺の携帯の暗証番号まで知られて、ロックを解除して中身まで見られた」
「え、そこまで？」
「半年の間にどんどんエスカレートしていった。家までつけられたり、常に俺の行動が読まれて追い掛けられるみたいになっていったんだ」
「げ。そこまでくるとストーカーじゃん……」

　想像しただけで私がゾッとし、少し引いてしまった。そんな人まわりにいないし見たことがない。彼はいったい、どうしてそんな悪いタイプの女性を好きになったんだろう。

「付き合うまではわからなかったの？」

　わかっていたら付き合わないよな。とは思ったけれど、念のために確認してみた。
　すると彼はその時の事を思い出しているのか、何か恐ろしいものでも見たかのように顔を青ざめながら答える。

「あぁ……全然気が付かなかった。というより、そういう女性には見えなかったんだ。だから俺が1番驚いた。付き合い始めてすぐ本性がジワジワ出てきたんだからな」

　聴きながら、まるでホラー映画でも見ているような恐怖を私まで感じた。