最後の恋って、なに?~Happy wedding?~

 さっき私が思った事は撤回。”悪い女性を好きになった”訳じゃなくて”悪い女性に引っ掛かってしまった”が正解だったんだ。好きになった相手から被害を(こうむ)って恐怖を植え付けられた。そう言葉にすると、更に恐ろしく思えてくる。

「問題はまだあった」
「え、まだ何か……?」

 今までのヘビーな話でも十分すぎる重みがあるというのに、まだ何があるって言うのか。私はゾクゾクと背筋が冷たくなるのを肌で感じながら、彼が話す続きに耳を傾けた。

「働いている職場で、俺達が付き合っている事が噂になった」
「そりゃバレるでしょ……」
「それだけならまだ良い。だが問題はその後だ。嫉妬した彼女が女性職員に対して嫌がらせを始めて、それが徐々に酷くなった結果、何人かが辞めていったんだ」
「あー……なるほど……」

 どんな嫌がらせかをしたかはわからないけど、きっとその彼女と女性職員達との間は修羅場だったんだろう。間に立たされた桐葉さんは、とてもじゃないけどキツかったと思う。容易に想像がつく。

「もちろん上司と、社長の耳にまで入った」
「え、恋人同士の事に社長まで介入したんです?」

 まさかと驚愕しつつ尋ねてみると、桐葉さんは何も言わず首を縦に振る。

「社長に知られたって事は収拾は……」

 そこには、信じられない事実が待っていた―――

「俺が責任を負わされて、他店に飛ばされた」


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