最後の恋って、なに?~Happy wedding?~
 
 えっ――――


 想像もしない予期せぬ桐葉さんの一言に、心臓が一瞬ドクンと跳ねる。
 
 桐葉さん……あなたは今、なんて……?


「あ、いや。“良い女”は語弊があるな。それはアレだ。社会人として立派だって意味だ」
「あ、はあ……」

 なるほど、そういう意味ね。それなら納得。
 『良い女』だなんて桐葉さんにしては珍しいどころか、どうかしちゃったかと思う発言だったけど、言った本人もちゃんと気付いたらしい。まずいなって焦った顔をしながら必死に否定の言葉をくれる。

「支配人が言いたい事はわかっていますから、大丈夫ですよ」
「そ、そうか」
「えぇ。気を使ってくださってありがとうございます。じゃぁ私はそろそろ――」
「なぁ……」

 会計をして帰ろうと、背もたれと背中の間に置いておいた鞄から財布を取り出すと、ふと隣で桐葉さんに話し掛けられて顔を上げた。
 
「お前は、良くやったと思う」
「……へ?」

 何の前触れもなく突然褒められたから、聞き間違いかと間抜けな声が出てしまったけど、彼は気にせず正面を向いたまま頬杖をつきながら続ける。

「仕事とプライベートを両立して遂行出来るバランスは、なかなかに難しい。その中で……上手くは言えないが、お前は頑張ってきたはずだ」
「は、はあ……」
「今回は、相手と望む方向性が違っただけだ。お前が全て責任を感じる必要はない」

 








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