最後の恋って、なに?~Happy wedding?~
これはいったい……。
まるで仕事の失敗をフォローしてくれるみたいに慰めているように聞こえて、なんかよくわからなかったけど、私はまた『ありがとう……ございます』と軽く頭を下げた。
すると桐葉さんは、頬杖をついたまま今度は正面から私の方に顔を向けて言う。
「元彼の事はよく知らないが……俺は――」
その少しの《《間》》に私は首を傾げて続きを待つ。
「お前みたいな女が彼女だったら、良かったと思う」
「え……」
「仕事に対しての考え方も、価値観も。俺も仕事人間だから、お前とだったら上手くいっていたかもしれないな」
「支配人……」
今日の彼はずっとおかしいと思っていたけれど、今の言葉は今日の中でも特に……
私みたいな彼女だったら、なんて……どうしてそんな事を?
「ここは俺が奢る。マスター、これで」
何事もなかったように、桐葉さんは財布からクレジットカードを取り出してマスターに手渡し、会計が済むとスッと椅子から立ち上がる。
「明日も仕事だ。お前も早めに帰ってゆっくり休め。あんま飲みすぎるなよ」
『お疲れ』と手を挙げて、そのまま店を後にしていってしまった。
「なんだったの……いったい?」
1人残された私は唖然としながらマスターに問い掛けるも、彼は笑顔を向けるだけ。
過去の女性関係も含め、私は今日、桐葉さんの知らなかった一面を見た気がする。
そして意外にも優しかったって事も―――――