最後の恋って、なに?~Happy wedding?~
やってしまったなと落ち込みながら自席へと戻ると、ちょうどそこにタイミング悪く凪がプランニングファイルを提出に現れた。
「内容の確認をお願いします」
「あ、うん……」
元彼を目の前にし、名刺入れを紛失した事への後ろめたさから辿々しく手を伸ばしてファイルを受け取った。
けれど何も知らない凪は、あくまで《《上司》》に対する態度で接してくる。別れてからは仕事の話は常に敬語。そう、まるで付き合う以前の頃みたいに。
「あ、明日までには見ておくよ……」
目も合わせず返事をする私は、まわりから見たらあまりに不自然だと思う。でも今はとりあえず名刺入れの事をバレたくないなと切に願ってしまう。
それなのに―――
「さっきの話、聞こえました」
「え……」
「名刺、失くしたんですか」
ビックリして顔を上げると、思わず目を合わせてしまった。こんな時に限って1番聞かれたくなかった相手に知られてしまうなんて。今日はなんともツイていない。
「えっと、それは……」
どう言い訳しようか頭をフル回転するも、さすがに本当の事を桐葉さん以上に本人に言えるはずがない。言ったところで彼がどんな反応するのか怖い。
「その名刺入れなんだけど……」
黙ったままにはいかずひとまず口を開くと、先に発したのは凪の方。
「捨ててくれて良かった」
それはあまりにバッサリと、躊躇なく切り捨てたセリフ。