優しい風
中は機械の音しかしてなくて、
回りの医師も看護師も
静かに仕事をしていた。

何か言いたそうなので、
看護師さんに
呼吸器を少しだけ外してもらった。

「愁…。私よ、杏だよ。
解る?聞こえてる?」

愁は苦しそうに
呼吸をしながら頷いた。

私は既に泣きそうだった。

「…はぁ、はぁ…杏。
…夢、叶えろよ。
途中…で、投げ出すなよ。
…はぁ…杏なら、
きっと…出来るから…
諦め…んな…」

「うん、叶えるよ!
自分のやりたい事ちゃんとやるから…
愁…生きて、
私の未来、ちゃんとみてよ。」

「…はぁ…解ってるよ…
ちゃんと見る…見てる…
ゴホッ、ゴホ、はぁ…
ちゃんと、見てる…」

愁は咳き込みながらそう言った。

「愁!」
< 104 / 115 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop