優しい風
「…平気だよ。
前にも何回かこういうこと
あったじゃん。
どしたの?
そんな改まっちゃってさ。」

精一杯の強がり。

でもそれは簡単にバレていた。

「…嘘付け。
本当はめちゃくちゃ淋しいくせに。」

「や、迷惑かけたくないから。」

「いいよ、かけても。
子供はかけるもんだから。
そういう風に出来ているんだ。」

父さんの言葉に泣きそうだった。

「泣いていいよ。
今、たくさん泣いて、
後でちゃんと笑いなさい。」

父さんはそう言って、
頭を撫でてくれた。

俺は泣いた。

こんなに泣いたのは、
久しぶりかもしれない。
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