蒼、俺の事だよ。何か?
「楽しいか?」





「別に。」



ずっとそんな調子の遊園地デート。初めてだから緊張してるけど、ほんとは葵だから言いたいこと言えて気が楽なの。





でも素直になれなくて。






強がって言って。後悔するのは何で?




「あっそ。」






そんな悲しそうな顔しないで、同情したくなる。葵のわがままで二人きりで遊園地デート中。悲劇は起きた。




「脱げ。」「何言ってんの?」





無理でしょ。






でもお気に入りのスカートがチョコアイスで自滅。





「女子じゃないのにスカート持ってるんだ。」







待ち合わせて最初に言われた。



嫌味な葵にイラっとしたけれど。




相手が葵でもやっぱり本当はすごく楽しみで。




スカートはこう見えても3つはあるんだよ?葵に言ったら信じないかな?










間が空いて。失言に気づき、顔を赤くする葵。


今それどころじゃないのに。なんかかわいいかも。





珍発言はまだ続く。




「俺買ってくる。」




何を急に?それこそイマソレドコロジャ無いのに!





見直すどころかあきれてものも言えない。葵は傷物の私(蒼)を置いていなくなってしまった。










葵置いて帰ろうかな、さっきまでの高揚感はどこへやら。




この遊園地そのものにも嫌気がさす。









寂しくて泣いちゃう。こんなとこいてほしいのは……


「おまたせ」






















葵が帰ってきた。慌てて涙をふく。こんな葵でもいると嬉しい、なんて少しだけ思ったり。













「これ。」「何?」



シール。貼る。葵の言葉に、頭の中でつながらなかった。よく見ると入り口にいたパンダのぬいぐるみのデザインだ。











「お前が好きそうなやつにしたからな。」




















いや、そういう意味じゃなくない?















ありがとう、って言ってる自分が変だ。











「つまんなくて悪い。」












「今度は龍も一緒でいいから。」












「うん。え?」





言ってみてなんか違う。













「また出かけるの⁉」










「当たり前だろ。お前は俺の弟子なんだから。」





あきれた。年上になんて口の利き方だってつくづく思ってたけど。ありえない。今度はジュース頭からかぶるんじゃないかな。怖い、ブルブル。




















「風呂入るまで俺のこと忘れないでいろ。」



「シールは契約のあかしだから。」









「なっ……!」



シール、貼れたけど私の顔は真っ赤。この子、本当に年下?











ほっぺにもシール貼りたい気分。もっと恥ずかしいからやらないけど。








「でも、俺は本音で話してほしいから」







まっすぐな瞳にドキドキする。






もしかして私も熱あるかも。誰かさんの熱、荷物にして持ってきちゃったかな。







葵の普段と違うその態度、その言葉にこたえたくて。




今日ぐらい素直になってもいいかなと思って。











「ほんとはね、」




勇気を出すんだ。


















「楽しい……!ありがとう」






お、おう。











ぎこちない空気。やっぱり言わないほうがよかったかな。












「俺も、


楽しい。」








そんなキミの言葉が救い。やっぱりはずかしい。





でもなぜか今日の恥ずかしさも忘れられた。龍君の事、今だけは忘れてしまった。






葵の事少しずつ知っていきたい。弟子って言うけど友達だから。
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