視えるだけじゃイヤなんです!
「ね、大丈夫? 顔色、すっごく悪いけど……」
「う、うん……」
「家、戻る? 無理しちゃダメだよ」
「大丈夫……このまま学校、行く」
 あたしは無理やり笑顔を作った。

 気のせい。きっと、何かの見まちがい。

 心配そうにする咲綾をなだめながら、あたしは学校までの道をつとめて明るくふるまった。
 そうして、二人で笑いながら校門を抜けようとしたときだった。

 目の前に広がる光景に、あたしは立ちすくんでしまう。

 なに、これ。

 校門からまっすぐ見えるのが校庭。昇降口は左手側にあって、あたしたちはそこに行かなきゃいけない。
 その昇降口から、たくさんの手が伸びていた。まるで昇降口に入る生徒たちをつかまえてやろうといわんばかりに、手はうねうねと動いている。

「――ひっ……」

「どした? 行くよ?」

 咲綾が不思議そうに首をかしげる。咲綾には見えないの?
 他の子たちは?
 あたしは勝手に震えはじめた体をなだめるようにしながら、あたりを見渡して――後悔した。



 校門の横に立っている桜の木。あの木にぶら下がっているのは、なに。

 校庭を走っている女の子、なんで頭がないの。

 職員室の窓からこっちを向いている女の人、なんで首が折れてるの……!


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