視えるだけじゃイヤなんです!
「な……なんで」
「ちょっと、ここみ?」
「やだ、なにこれ、やだ!」
わけがわからなくなって、あたしは叫んだ。立ってられなくてずるずると座りこむ。息が苦しい。吸っても吸っても全然息が入ってこない。
「ここみ!? だれか、先生呼んできて!」
咲綾が青い顔であたしの肩をゆすった。
その咲綾の肩ごしに見える血だらけの女が、あたしにニヤリと笑いかける。
「ひいぃっ……!」
声にならない悲鳴を挙げて、あたしは目をぎゅっとつむった。もうダメ、息が苦しくて、頭がぼうっとしてきて――……。
うすれていく意識の中で、だれかがあたしの体に手をかけた。そのまま持ち上げられて、ゆっくりと運ばれる。
そのまま、あたしは……。
◆◆◆
ぱちり、と目を開けると、見なれない天井が目に入った。
あたし、倒れちゃったんだ。確かだれかがあたしを運んでくれて……、それで……。
頭がぼーっとする。何度かまばたきをして、あたしはまわりの様子をうかがった。
予想に反して、そこは保健室じゃなかった。
板張りのキレイな天井。木目が浮いていて、いかにも高級な旅館ってかんじの場所だ。部屋もどうやら和室のようで、あたしはそこの布団の上に寝かされていた。
畳独特のい草の匂いと、うっすらとただよう、いい香り。お香かな……かいでいるだけで頭の中がどんどんクリアになっていって、気分が落ち着いてくるようだった。
ゆっくりと体を起こす。
ここは、どこだろう。
「あ、起きた」
やわらかな声に、あたしはぱっと横を向いた。
和室の部屋の奥。その障子が開いていた。奥は縁側になっているみたいで、大きな掃き出し窓がある。そこから見える、すっきりとした青空がまぶしい。
その縁側に腰かけて、こっちを見ている人がいる。