視えるだけじゃイヤなんです!
 あたしは、どきりとした。

 少し長めの、真っ白い髪の毛が目に入る。革の手袋をはめて、さらっと和服を着こなしているけど、どう見てもあたしと同年代の男の子。色白のキレイな顔立ちで、女の人って言っても通じるような見た目をしている……。

 その男の子は、立ち上がるとゆっくりとあたしに近づいた。

 あたしはなんだかドキドキしてしまう。だって、男の子なのにすごくキレイで、なんだかいい匂いまでしていて、クラクラする。

「まだ、霊障が抜けてないから。無理しないで」
「レイショウ……?」
「うん」

 男の子は、あたしの枕元に正座をする。

「お化け、視えたんでしょ?」

 その言葉に、あたしはさっきまでのできごとを全部思い出す。
 そうだった、あたし……。通学路ですれ違った女の人も、学校にいたいろんなお化けも、本当にあったことなの?

 また少し体が震えはじめたあたしに、男の子は困ったように眉を下げた。

「霊障は、霊が障る……。つまり、お化けが君の体に悪い影響を与えてたんだ。倒れちゃったのも、そのせいかな」
 そう言うと、男の子はす、と体を伸ばして縁側の奥に声をかける。

「昭! ほら、お前もこっちに来なさい」

 しぶしぶ、といった風情で出てきたその顔を見て、あたしは思わず声を挙げた。
「あんた、昨日の……!」

 むっとした顔で、白い髪の男の子の隣にあぐらをかいたその男の子は、昨日森の中で出会った、黒髪の男の子だった。


  ◆◆◆


「倉橋透です」

 白い髪の男の子がにっこり笑っておじぎをする。

「――倉橋昭」

 黒い髪の男の子が、ぶっきらぼうに言い捨てた。

「ええと……紺野ここみ、です」
 なんとなく流れで、自己紹介をしてしまう。
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