視えるだけじゃイヤなんです!
「ここみちゃん、ね。かわいい名前」
 にこり、と白い髪の男の子が笑った。

「僕たちのことは、名前で呼んでもらっていい? 苗字が同じだから、ね?」

 そう言ってもの柔らかに微笑む男の子――透、くんに、あたしはちょっとドキドキしてしまう。だって、同じくらいの男の子に、名前を直接呼ばれるなんてほとんどないもん。

 透くんはあたしにニコっと笑いかける。なんだろう、すごく安心する笑顔だなぁ。ほわほわしてて、柔らかくて、なんでも許してしまいそうになる。

「ここみちゃん。きっと今、すごくいろんなことがおきて、ちょっと混乱しちゃってるよね。だから、まずは説明させてほしい」
 さっきまでの優しい表情をくずさないまま、透くんはそう言った。

「昨日、昭と会うまえに、ここみちゃん、石にさわったでしょ?」

 あたしはこくりとうなずいた。
 確かに、しかめっ面でそっぽをむいてる黒髪の男の子――昭くんも、昨日そのことを気にしてたっけ。

「あの石は、うーんと、なんていうのかな、特殊な力が封印されている石なんだ。数百年に一回、あの石が光っているときにさわると封印が解けて、力を手に入れることができる」
「力……?」
「お前が横取りした力だ」

 昭くんが、低い声でつぶやいた。

「昭! まだそんなこと言ってるの!?」
「だって! お前だって知ってるだろ! 俺があの力を手に入れるためにどんだけ苦労してきたか……それを、横からかっさらわれたんだぞ!?」
「元はと言えば、昭が森で迷ったからいけないんじゃない」
「しかし!」
「そういうの、往生際が悪いっていうんだよ!」

 目の前でケンカを始めた二人に、あたしは目を白黒させる。そんなあたしに気づいたのだろう、透くんはこほん、とひとつ咳をした。

「つまり、その力っていうのがね。ここみちゃんが今困っている、あの力なんだ」
「あたしが、困ってる……」
「そう。霊を視ることができる、力」


 霊を、視る力――……?


 あたしは口をぽかんと開けてしまう。この人は、何を言っているんだろう。

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