視えるだけじゃイヤなんです!
「ここみちゃんがさわった石は『狐石』って言われてて。千里眼や透視、霊を正確に見る力を持つことができるものなんだ。それにさわっちゃったから、ここみちゃんは霊が急に視えるようになっちゃった、ってわけ」
あたしは目を見開いた。
じゃあ、あたしがあの時、うかつに石をさわったから?
だから昨日もあんな怖い目にあって。今日も変なものがたくさん見えて……。
「……そんな」
起こったことが信じられなくて、じんわり涙が出てくる。
「それ、どうにかすることはできないの?」
この話が本当か、ウソか、なんてそんなのわかってる。だってあたし、ちゃんと視たもん。クモみたいなお化けや、学校の途中で行きあった女の人。学校の中にいた、たくさんのお化けたち……。あんなのが視えるようになったのは、ぜんぶあの石をさわったあとからだ。
「お前、力を何だと思ってる」
昭くんがするどい声を挙げた。
「力は手にするか、しないか、のどっちかだ。お前の中に吸収された力は、これからもずっとお前の中に残る」
あたしは、のどからこみ上げてくる感情をどうしたらいいかわからなかった。
「それじゃ……それじゃ、あたし、これからずっと……?」
「――そうだね。ここみちゃんは、これからずっと霊を見続けることになっちゃうってこと、かな。……かわいそうだけど」
頭をなぐられたみたいな衝撃に、あたしは言葉を失った。
ウソでしょ。
これから、ずっと?
これからずっとあんなものを、見続けなきゃいけないの?
「……泣いても状況は変わらないだろ」
昭くんが、呆れたみたいに声を挙げた。
「……うるさいな、わかってるよ」
「じゃあ泣きやめよ。いちいち、めんどくさい」
むっかつく!
あたしはぐしぐしと手の甲で涙をふいた。この人、人の気持ち全然わかってない。
そんなこと急に言われて、普通でいられるわけないじゃない。泣くくらい許してくれたってバチは当たんないよ!
「うん、急だもんね。怖かったね、ここみちゃん」
透くんが、ふんわりと言った。
「だからね、僕と昭は、ここみちゃんのことを助けようと思ってる」
へ?
「あの石にさわっちゃったことは、しかたがない。昭はここみちゃんのせいだって言ってるけど、そもそも森の中で昭が迷わなければよかっただけの話なんだ。それに、まわりに結界をはっておけばここみちゃんが入り込むこともなかったし。だから、これは昭の、そして僕の失態でもあるんだよ」
その言葉を受けて、ばつが悪そうに、昭くんは舌打ちをした。透くんはそんな昭くんをちらっとにらみ、また笑顔に戻って言葉を重ねる。
「つまり、今のここみちゃんの状態は、僕たちの責任でもある。それで、ここみちゃんを助けるために、昭にここ、倉橋家に連れてきてもらったんだ」
その言葉に、あたしははっとした。
じゃあ、倒れたとき、あたしを運んだのは――……。