視えるだけじゃイヤなんです!
 バッと昭くんのほうを見ると、彼はぎゅっと眉を寄せた。
「お前、やせすぎ。もっと食わないと。力に体がついていかないのも当たり前だぞ」
「こら、昭。女の子にそんなこと言わないの」
 やばい、そんなのぜったい、目立ちゃったに決まってる。明日咲綾に質問攻めにされる未来が見えて、あたしは顔が熱くなる。

 ん? でも……。
 あたしはふと首をひねった。

「あの……助けるって、どうやって」
 力は手にするか、しないかのどっちかしかない、って言ってなかったっけ。

 昭くんは仏頂面のまま、淡々と言葉を放った。
「お前の力に、制限をかける」
「制限……?」
 そうだ、と昭くんは頷いた。
「今のお前は、力が解放されている状態だ。だから、ある一定の条件下にならないと力を使えないように制限をかけるんだ」
「えっとね、今は何にもしなくてもお化け見放題プランなんだけどね。制限をつければ、特定のことをやらない限りは視えなくなる、ってわけ。……どう? やってみない?」

 つまり、その『特定のこと』さえやらなければ、いつも通りに戻るってこと?
 あたしはぎゅっと唇をかみしめた。

「……やる」

 もうあんなの、視たくない。
 あたしはこっくりとうなずいた。


 ◆◆◆


 一度部屋から出た透くんが、再び戻ってくる。片手にはガラスのお皿。もう一方の手には水差し。

 昭くんも一度部屋から出て、今はあの、森の中でも見た刀を腰に差している。
 あたしは布団の上に正座する。

「じゃ、やろうか」

 そう言って、透くんがあたしに向い合せで正座する。目の前にガラスの皿を置き、水差しの水を注いだ。

「透くん、これは?」
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