視えるだけじゃイヤなんです!
「でもさ」
ふと、あたしは思った。
「この狐の窓ってやつが制限なんだよね? こんなのわざわざつけなくても、それこそ全部視えないようにする方法だってあるんじゃないの?」
昭くんと透くんは顔を見合わせる。
「あるよ」
透くんがニコッと笑った。
「でも、ダメ」
「なんで!?」
「力を完全に封じるっていうのは、制限をかけるのとは根本的に目的がちがうんだ。それをやると、ここみちゃんへの呪いになっちゃう」
「の、呪い……」
こわっ。その単語だけで穏やかじゃない感じがする。
「そうだ。それに、こういう力は出口を作っておいてやった方がいい。その方が危なくないんだ」
ふーん……。なんだかフクザツ。
でも、まあ、これで視えなくなったワケだし、あたし的には問題ないかな。
「さて、と」
昭くんが腰に刀を戻しながら、声を挙げる。
「じゃ、行くぞ」
へ?
「時間があんまりないんだ。さっさと支度しろ」
「あの、それあたしに言ってるの……?」
昭くんはじろりとあたしを見た。
「お前以外のだれがいる」
「え、だって、行くって? 支度って、なに?」
昭くんはため息をついて、あたしの顔をじっくり見た。
「紺野ここみ。俺が手に入れるはずの力をお前が横取りしたことに関しては、もうとやかく言わないことにする」
言ってんじゃん。あたしは心の中で毒づいた。
「そのかわり、お前は俺を助ける義務がある。だから、俺といっしょに来い」
「はあ!?」
何言ってんの、こいつ。あたしはなんだかむしょうに腹が立った。
そもそも、最初の態度からしてサイアクだったんだ。あたしは好きでこんな力欲しかったわけじゃない。それなのに、ドロボウだの、横取りだの、あげくの果てに助ける義務!
あたし、この人苦手だ。
「昭。口には気をつけなさいっていつも言ってるでしょ。そんないい方したら、手伝ってもらえるものも手伝ってもらえなくなっちゃうよ」
透くんの柔らかい声が、あたしの怒りを少しだけなだめてくれた。
なんだろう、あたし、この人の声に弱いみたい。なんだかふわっとして、ドキドキして、いら立ってガサガサしてた心がちょっとだけ丸くなった気がする。
「ここみちゃん、ごめんね。この礼儀知らずのかわりに、僕からもお願い」
透くんが眉を下げながらあたしに頭をぺこりと下げた。
「本当は僕と昭の二人でやらなきゃいけないことなんだけど……」
「ダメだ。お前はまだ体が治ってない」
透くんの言葉をさえぎるように、昭くんがきっぱりと言った。
「今回の仕事には、霊を視る力がぜったい必要不可欠なんだ。だから……ちょっとだけ、ここみちゃんの力を貸してもらえないかな? もちろん、この仕事が終わったら、力を使うか、使わないかはここみちゃんの自由。僕たちはなにも干渉しないって約束する」
ええと、つまり。今までの話から考えると……。
あたしはイやな予感で胸がいっぱいになる。
「あの、もしかして、仕事……って、その、もしかしてだけど」
「うん」
透くんはにっこり笑って、こう言った。
「僕たち、お化け退治が仕事なんだ」
ふと、あたしは思った。
「この狐の窓ってやつが制限なんだよね? こんなのわざわざつけなくても、それこそ全部視えないようにする方法だってあるんじゃないの?」
昭くんと透くんは顔を見合わせる。
「あるよ」
透くんがニコッと笑った。
「でも、ダメ」
「なんで!?」
「力を完全に封じるっていうのは、制限をかけるのとは根本的に目的がちがうんだ。それをやると、ここみちゃんへの呪いになっちゃう」
「の、呪い……」
こわっ。その単語だけで穏やかじゃない感じがする。
「そうだ。それに、こういう力は出口を作っておいてやった方がいい。その方が危なくないんだ」
ふーん……。なんだかフクザツ。
でも、まあ、これで視えなくなったワケだし、あたし的には問題ないかな。
「さて、と」
昭くんが腰に刀を戻しながら、声を挙げる。
「じゃ、行くぞ」
へ?
「時間があんまりないんだ。さっさと支度しろ」
「あの、それあたしに言ってるの……?」
昭くんはじろりとあたしを見た。
「お前以外のだれがいる」
「え、だって、行くって? 支度って、なに?」
昭くんはため息をついて、あたしの顔をじっくり見た。
「紺野ここみ。俺が手に入れるはずの力をお前が横取りしたことに関しては、もうとやかく言わないことにする」
言ってんじゃん。あたしは心の中で毒づいた。
「そのかわり、お前は俺を助ける義務がある。だから、俺といっしょに来い」
「はあ!?」
何言ってんの、こいつ。あたしはなんだかむしょうに腹が立った。
そもそも、最初の態度からしてサイアクだったんだ。あたしは好きでこんな力欲しかったわけじゃない。それなのに、ドロボウだの、横取りだの、あげくの果てに助ける義務!
あたし、この人苦手だ。
「昭。口には気をつけなさいっていつも言ってるでしょ。そんないい方したら、手伝ってもらえるものも手伝ってもらえなくなっちゃうよ」
透くんの柔らかい声が、あたしの怒りを少しだけなだめてくれた。
なんだろう、あたし、この人の声に弱いみたい。なんだかふわっとして、ドキドキして、いら立ってガサガサしてた心がちょっとだけ丸くなった気がする。
「ここみちゃん、ごめんね。この礼儀知らずのかわりに、僕からもお願い」
透くんが眉を下げながらあたしに頭をぺこりと下げた。
「本当は僕と昭の二人でやらなきゃいけないことなんだけど……」
「ダメだ。お前はまだ体が治ってない」
透くんの言葉をさえぎるように、昭くんがきっぱりと言った。
「今回の仕事には、霊を視る力がぜったい必要不可欠なんだ。だから……ちょっとだけ、ここみちゃんの力を貸してもらえないかな? もちろん、この仕事が終わったら、力を使うか、使わないかはここみちゃんの自由。僕たちはなにも干渉しないって約束する」
ええと、つまり。今までの話から考えると……。
あたしはイやな予感で胸がいっぱいになる。
「あの、もしかして、仕事……って、その、もしかしてだけど」
「うん」
透くんはにっこり笑って、こう言った。
「僕たち、お化け退治が仕事なんだ」